聖書を読む 「各部族の栄枯盛衰」

※私はミッションスクール出身ですが洗礼を受けていません(信徒でない)、 あくまで文学・歴史書として読んだ場合の個人的な感想です。基本的に信徒以外の方に向けて書いております。


エフライム族の台頭


モーセ五書」では祭司職(レビ族)を権威づける為に「モーセ」や「アロン」等の活躍が描かれていますが、これは自分達の土地をもっていなかった時代に「神の意思を民へ伝える」役割を持つ大祭司イスラエルの部族で中心的な役割を果たしていた為です。

カナン(パレスチナ)への侵略が開始されるとイスラエルの12部族はそれぞれの部族に土地を割り当てますが、この時に最も豊かな土地をエフライム族が割り当てられます。この事は何を意味しているのでしょうか。

この時代について書かれた「ヨシュア記」では非常に多くの戦闘が描かれており、戦闘で活躍した部族の地位が向上している事が読み取れます。中でも「ヨシュア記」の名前にもなっているヨシュアはエリコやアイを侵略する際の活躍が詳細に描かれており、ヨシュアを輩出したエフライム族がカナン侵略初期に中心的な役割を果たしていたと想像できます。




ユダ・ベニヤミン族の台頭


その後も、割り当てられた土地を各部族が侵略していくのですが、この時代は戦闘部族が台頭して来たとはいえ、まだまだ祭司職(レビ族)の地位も維持されていました。しかし、イスラエル連合王国の誕生とともに「イスラエルの王」が登場すると、それまで唯一無二の存在であった大祭司の有難味は薄らいでしまいます。

この時代を描いた「サムエル記」や「列王記」は大祭司よりもイスラエルの王を中心に描かれています。日本でも古事記や日本書紀で神話と結びつける形で王家(天皇家)の正当性を描いていますが、旧約聖書のこのあたりの文書も同じような役割を期待されて作成された物だと考えられます。

聖書を読んだ事がない人は旧約聖書の一部が王家の歴史書だというのは意外に感じるのではないでしょうか。そしてこの王家とはユダ族、ベニヤミン族の事であり「サムエル記」や「列王記」はユダ族、ベニヤミン族を権威づける役割も担っているのです。




レビ族の没落


ハスモン朝の時代にはイスラエルの12部族はユダ族(ベニアミン族は同化)とごく少数のレビ族のみになっており、ユダ族が「イスラエルの統治者はダビデの家系(イスラエルの王=ユダ族)から選ばれるべきである」と考えていた為、レビ族由来のハスモン朝の支持基盤は脆弱でした。

ハスモン朝は祭司(レビ族)の勢力であるサドカイ派に接近する事で何とか100年間は存続したものの紀元前37年に滅亡し、ヘロデ朝に取って代わられてしまいます。

紀元70年のエルサレム神殿破壊により「大祭司(レビ族)」押しの勢力(サドカイ派)が完全に力を失った事により、「イスラエルの王(ユダ族)」押しの勢力(ファリサイ派)が最大勢力となります。そしてファリサイ派主導で実施されたヤムニア会議で「マカバイ記」が外典とされてしまった事で「ハスモン朝(レビ族)」の功績は信仰の対象からも除外されてしまいます。
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聖書を読む 「マカバイ記」

※私はミッションスクール出身ですが洗礼を受けていません(信徒でない)、 あくまで文学・歴史書として読んだ場合の個人的な感想です。基本的に信徒以外の方に向けて書いております。


ハスモン朝の成立


紀元前586年にバビロニアのネブカドネザルによって滅ぼされた事に始まる「バビロン捕囚」は有名ですが、実はその後にユダヤ人の国家が一時的に復活した事はあまり知られていない様に感じます。

紀元前167年頃のパレスチナはアレクサンドロス3世(アレクサンダー大王)の東方遠征の結果誕生したマケドニア人の王朝であるセレウコス朝に支配されていました。そこで、ハスモン家が中心になって「マカバイ戦争」と呼ばれる独立運動が発生します。その結果、セレウコス朝の軍隊がエルサレムから撤退し、紀元前142年頃にハスモン朝が成立します。

この独立は啓典の民の価値観では「神が与えて下さった勝利」と解釈され、ハスモン朝の成立に関わる一連の歴史書が聖書に収められる事になります。その文章が即ち「七十人訳聖書」に収められている「マカバイ記」なのです。



モーセ五書とレビ族


ハスモン家を輩出したレビ族は「モーセ」や「アロン」の出身部族であり、アブラハムに連なる部族の中でも祭司や大祭司の役職を与えられる特別な部族です。古代イスラエル王国の誕生までイスラエルの民達を指導する存在であり、言い換えれば最も権力を持っていた部族でした。

モーセ五書」の中で「モーセ」は数々の奇跡を起こすなど大活躍をする事で有名ですが、実は「アロン」も「モーセ」に勝るとも劣らない人物として書かれています。大祭司はアロンの子孫から選出される事になっていますので、アロンを素晴らしく書くことで大祭司の箔をつける目的があったのかもしれません。
出エジプト記 7:1(口語訳)
主はモーセに言われた、「見よ、わたしはあなたをパロに対して神のごときものとする。あなたの兄弟アロンはあなたの預言者となるであろう。 
出エジプト記 7:11-12(口語訳)
11そこでパロもまた知者と魔法使を召し寄せた。これらのエジプトの魔術師らもまた、その秘術をもって同じように行った。 12すなわち彼らは、おのおのそのつえを投げたが、それらはへびになった。しかし、アロンのつえは彼らのつえを、のみつくした。




外典となったマカバイ記


ユダヤ人悲願の独立国家を作った者達の英雄譚であるはずの「マカバイ記」ですが、不思議な事に紀元90年頃にファリサイ派を中心に実施された「ヤムニア会議」において正典から除外されてしまいます。

「ヘブライ語写本を持たない」という事がその理由ですが、この判断によりそれまで200年間程の間、神の勝利だと信じてられて来たハスモン朝の成立やそれに伴う英雄達の行動が、それ以降は神の意志ではなかった事になってしまいます。

我々異邦人にとってはマカバイ記はハスモン朝を権威づける為の文章と捉えるの事はそれほどおかしな事ではないと思いますが、それまでマカバイ記を信じてきた信徒の人々はどう感じたのでしょうか。人が編纂している以上「聖書」であっても絶対ではないと納得したのでしょうか。




聖書を読む 「ハムの系図」

ハムの系図

ハムの系図をまとめておきます。ペリシテ人等のエジプトやカナンの民族へと繋がります。


 
ハムの系図


歴代誌上 1:8-16(口語訳)
ハムの子らはクシ、エジプト、プテ、カナン。 9クシの子らはセバ、ハビラ、サブタ、ラアマ、サブテカ。ラアマの子らはシバとデダン。 10クシはニムロデを生んだ。ニムロデは初めて世の権力ある者となった。
11エジプトはルデびと、アナムびと、レハブびと、ナフトびと、 12パテロスびと、カスルびと、カフトルびとを生んだ。カフトルびとからペリシテびとが出た。
13カナンは長子シドンとヘテを生んだ。 14またエブスびと、アモリびと、ギルガシびと、 15ヒビびと、アルキびと、セニびと、 16アルワデびと、ゼマリびと、ハマテびとを生んだ。

聖書を読む 「レビの系図」

レビの系図

レビの系図をまとめておきます。「十戒」「モーセ五書」で有名なモーセと大祭司となるアロンを含む系図です。
※一部、妻が分からなかったので抜けています。(分かり次第追記します)


レビの系図


民数記 3:17-20(口語訳)
17レビの子たちの名は次のとおりである。すなわち、ゲルション、コハテ、メラリ。 18ゲルションの子たちの名は、その氏族によれば次のとおりである。すなわち、リブニ、シメイ。 19コハテの子たちは、その氏族によれば、アムラム、イヅハル、ヘブロン、ウジエル。 20メラリの子たちは、その氏族によれば、マヘリ、ムシ。これらはその父祖の家によるレビの氏族である。

民数記 26:59 (口語訳)
アムラムの妻の名はヨケベデといって、レビの娘である。彼女はエジプトでレビに生れた者であるが、アムラムにとついで、アロンとモーセおよびその姉妹ミリアムを産んだ。

出エジプト記 18:2-4 (口語訳)
それでモーセのしゅうと、エテロは、さきに送り返されていたモーセの妻チッポラと、 3そのふたりの子とを連れてきた。そのひとりの名はゲルショムといった。モーセが、「わたしは外国で寄留者となっている」と言ったからである。 4ほかのひとりの名はエリエゼルといった。「わたしの父の神はわたしの助けであって、パロのつるぎからわたしを救われた」と言ったからである。

出エジプト記 6:23 (口語訳)
アロンはナションの姉妹、アミナダブの娘エリセバを妻とした。エリセバは彼にナダブ、アビウ、エレアザル、イタマルを産んだ。

歴代誌上 6:4(口語訳)
エレアザルはピネハスを生み、ピネハスはアビシュアを生み

聖書を読む 「聖書由来の名前 12部族」


聖書由来の名前

これまでの記事で出てきた人物に由来する名前をまとめておきます。

ルベン

オランダ語レーヴェンルーフェン
フランス語ルーヴァン
英語ルーベンルーベンス

シメオン

イタリア語シモーネシモーヌ
ギリシア語シュメオーンシモン
ドイツ語シモーネ
ポルトガル語シモーネ
英語サイモン

レビ

フィンランド語 レヴィ
英語リーヴァイリーヴィ

ユダ

英語ジューダス

ヨセフ

アラビア語ユースフ
イタリア語ジュゼッペ
ウクライナ語ヨースィプ
ギリシア語ヨーセーフ イオシフ
スペイン語ホセ
セルビア語ヨシプ
ドイツ語ヨーゼフ
フランス語ジョゼフ
ヘブライ語ヨセフ
ポルトガル語ジョゼ
ポーランド語 ユゼフ
ラテン語ヨセフヨセフス
ロシア語ヨシフ
英語ジョセフジョージョーイ

聖書を読む 「アブラハムの系図」

アブラハムの系図

アブラハムの系図をまとめておきます。ヤコブ(イスラエル)の子供達が=イスラエルの12部族となります。


 
アブラハムの系図



創世記 16:15 (口語訳)
ハガルはアブラムに男の子を産んだ。アブラムはハガルが産んだ子の名をイシマエルと名づけた。
創世記 21:3 (口語訳)
アブラハムは生れた子、サラが産んだ男の子の名をイサクと名づけた。
歴代誌上 1:32 (口語訳)
アブラハムのそばめケトラの子孫は次のとおりである。彼女はジムラン、ヨクシャン、メダン、ミデアン、イシバク、シュワを産んだ。ヨクシャンの子らはシバとデダンである。

聖書を読む 「ヤムニア会議」

※私はミッションスクール出身ですが洗礼を受けていません(信徒でない)、 あくまで文学・歴史書として読んだ場合の個人的な感想です。基本的に信徒以外の方に向けて書いております。


聖書に加えるか否か


「誰を預言者と認めるのか」という問題については既に書きましたが、同じ様な理由で「どの文献を聖書に収めるのか(本当に信じて良い預言なのか)」という問題が当然出てきます。

聖書は時代が進むにつれて収められる文献の数がどんどん増加した為、非常にボリュームのある書物になりましたが、逆をいえば初期の聖書は我々の知る聖書と比べると至ってシンプルな物だっただろうと推測できます。

増え続ける文献について「本当に正典として相応しい書はどれなのか」という議論は常に行われて来た訳ですが、ユダヤ教では紀元90年頃にファリサイ派を中心に「ヘブライ語聖書」の正典を確定させるべく研究が開始されます。


ヘブライ語聖書の完成


研究を行っていた土地の名前から「ヤムニア会議」と呼ばれるその研究の結果、彼らが完成させた正典は「マソラ本文(Masoretic Text)」と呼ばれます。

この「マソラ本文」はユダヤ教徒達の間で伝承され続け、現在でも「ヘブライ語聖書」と言えば「マソラ本文」の事を指します。更に、1947年にパレスチナで発見された紀元100年頃に書かれた写本と殆ど同じ内容であった事から、彼等の聖書はヤムニア会議によって確定されたといえます。

余談ですが、「ヤムニア会議」ではヘブライ語写本を持たないという理由で「七十人訳聖書」の複数の文献を正典から除外した他、ユダヤ教の教会に相当する「シナゴーグ」からキリスト派を追放する事が決められるなど、キリスト派を意識した政策も行われた。



手を加えられない事の意味


「マソラ本文」は現在まで殆どそのままの内容を伝承されて来た非常に面白い書物ですが…その事は一つの恐ろしい事実の現れでもあります。

収められる文献の数がどんどん増加する特徴を持っている「聖書」ですが、彼等の宗教感を考えれば神からの指示は随時更新される為、新しく登場した預言者の言葉は全て文書化するべきであり、聖書がどんどん長くなっていく事は特段おかしな事ではないのです。

むしろヤムニア会議後に聖書に収められる文献が増えていない事実は、「預言者」がピタリと登場しなくなった事を現しており、その様な異常事態が千年以上も続いている事を示しているのです。



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おぼさりてい

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